3時のおやつは乳酸菌

人には人の乳酸菌

シンガポール渡航記〜シンガポールリベンジャーズ編〜

いよいよ今回のメインとなるコンサート当日の朝。朝日が窓から差し込み、その光で目を覚ますという最高のシチュエーションで起きることができた。
 
今日この日のために眉にまで課金をし、自分比で最高の顔面を作り上げようと気合が入った。

呑気に顔面塗装に勤しんでいると、サウチェ*1列がすでに形成されており、さらにとんでもなく伸びているということをわたしたちの情報の源、Twitterから知る。
前日の晩にサウチェ列には何時から並ぶかといった会話をしていたのだが、本番の体力も考慮して、公式から出ている集合時間の1時間前くらいに到着するのでいいやといった、おたくの行動力体力をなめくさった発言をしていたので大きく出遅れることになる。海外に来て浮かれていたので、いつものおたくとしての勘が鈍っていたのかもしれない…。
列が形成されてしまっているものは仕方がないので、予定の出発時間より早めに出ることを目標に準備に励んだ。ここから約10時間近くほぼ飲まず食わずの戦いが始まることをわたしたちはまだ知らない。
 
現地に着くまでの足取りは軽く、荷物は最小限にといった考えもあったため、小さめの鞄に必要最低限の荷物をぶち込んだ。いつもの自分なら誰担(ペン)であるかをひた隠しにし、コンサートが始まる、何なら始まってから応援グッズを出すくらいだが、デカめのお名前ボードをそのままの状態で持ち、今からスキズのコンサートに行きますが何か?くらいのドヤ顔テンションでMRTに乗り込み向かっていた。
 
コンサート会場の最寄り駅周辺では今にでも祭りが始まるのではといったおたく特有のアツい空気が渦巻いていた。おたくは世界共通でアツい生き物なんだ。
盛り上がっているおたくを横目にわたしたちは、サウチェ列へ向かう。Twitterの情報通り、いや情報以上に列がさらに伸びていた。どこが最後尾かわからないくらいの長蛇の列であり、オワッタなと少し思った。このとき水を買っていなかったことが、後の行動すべてに響いてくるので水は列に並ぶ前に買っておく、持っておくことを自戒の念も込めておすすめする。
 
友人と列に並んでいたので、他愛ない(ほぼ中身のない)話をしていたら、列が進んでいた。このとき既に入場が始まっている気配と、新たな列が形成されていることに気付き焦る。あの列はなんだ、わたしたちが並んでいたこの列は無駄になるのかといった思いが過っていた…のはわたしたちだけではないようで、前後にいたマレーシアと中国のおたくが話しかけてくれた。なんと日本語で。あの列はなんだろう、でも順番に並んでいるから大丈夫だよね、友達に電話して聞いてみる!…このまま並んでいたら大丈夫みたいといった会話をきっかけにボディランゲージと拙い英語で会話をした。どうやって日本語の勉強をしたのか聞くとアニメを見て学んだといった、テレビでしか見たことのないような返しが実際にあり、本当にアニメで勉強できるんだ、すげえとなった。
 
サウチェ入場の証としてVIPと書いてある首から下げられるタイプのスペシャルチケットをもらい、なんだか偉くなった気分になった。偉くなった気分なだけで、おたくであることには変わりないので、めちゃくちゃ厳重な身体検査をされた。きっとシンガポールではおたく本体が危険な生き物として認識されているのだろう。その認識は正しい。
飛行機に乗るときの金属探知機で全身を検査されるコンサートは初めての経験であり、鞄の中身もさぞ厳重にチェックされるのであろうと思いきや、棒きれで雑にガシガシとつつかれる原始的な方法であった。なんだこの差は。同時にこのとき水を持っているとバケツに捨てないといけないようだった。
 
そして水を捨て置いたところで、入場前に水を購入できるスペシャルタイムが発生。飲まず食わずチャレンジに自発的に参加する羽目になっていたわたしたちは水を欲していた。1本2ドルに対して、わたしたちは50ドル所謂日本円でいう約5000円しか持っておらず、細かいお金しか対応していないとのことで、金があれば何でも買えるわけではないと学んだ瞬間だった。絶望に打ちひしがれていた中、周りの優しいおたくに助けられ、命の水を購入することができました。助けてくれたおたくにたくさんの幸が訪れますように。
 

そしていよいよ入場となり、その場にいたおたくが立ち上がり始めると周辺一帯で拍手が起こり、勇者(おたく)お見送りムーブメントといった謎の空間が出来上がった。お見送りされる側であったわたしたちは行ってくるよと颯爽と手を振り会場に入った。
会場に入ってからが勝負であり、メインステージの前方は埋まっていたので、センターステージの前列に狙いを定めた。ありがたいことに数々のスタンディングを経験しているプロおたくと仲良くなれたので、イケイケどんどんの魂で引き上げてもらい、入ったときは5~6列目にいたのが気付いたら2列目にいた。
 
始まってからの記憶は皆無に等しい。ずっと目の前で見たいと願っていたアイドルがそこにいるのだ。手を伸ばせば届きそうな距離で彼らを見上げると息遣いが聞こえ、瞬きしている瞬間が見える。凹凸がすごい…。全員顔がファイナルファンタジーかと思うくらい綺麗で本当に生きているのかと失礼ながらも思ってしまった。


普段はファンサなんてものは求めたりしないけれど、ここまで来たからには絶対に視界に入りたいといった欲が沸々と湧いてきた。海外、どこまでもおたくを強欲にさせてくる。

日本で行われるコンサートで、グッズ類を上にあげようもんなら後ろからサクッと刺されかねないのだが、海外ではルールなんてものは存在しない(※ちゃんとあります)ので、無差別格闘技のごとく、お名前ボードで戦うことにした。

こちらの方向に推しが歩いてくるたび、柄にもなく心臓がドコドコと脈を打っているのを感じた。こっちを向いてほしいけれど向いてもらってもどうしたらいいのかわからない、純情おたく心。そんな気持ちを知る由もない、推しはこちらの存在に気付き、ヨッ友のごとく手を振ってくれた。それはほんとうに一瞬の出来事だった。

自分に手を振ってくれた確証が持てず、ひるんでしまったのだが友人が今の絶対こっち見てたよ良かったねとそのときおたくが一番欲しいであろう言葉をくれた。そんな友人のために、自分もファンサの保証人になりたいと強く思った。

 

このあとのわたしはというとひたすらに浮かれ、フィリックスが織り成す流れ星(Star Lostでのお決まりの動き)の一部となり会場は大きな盛り上がりを見せ、いつのまにかサウンドチェックという名のVIPのお遊びは終わっていた。

サウチェ後は本番のために指定の場所に並ぶのだが、土地勘のないわたしたちは集合場所がわからず右往左往、おまけにはゲリラ豪雨真っただ中ときた。またしても拙い英語力を駆使し、指定の場所を見つけることができた。

ここからが本当の戦いであった。サウチェは友人と参加できたのだが、本番はブロックが分かれているため、各々のブロックでどれだけ前に詰められるかを早速実践する場となった。

サウチェでいかに身体検査を早く終わらせるかがカギとなっていることを知っていたので、かなり身軽な状態で本番に挑み、浪速のシューマッハ競歩を見せつけ無事会場にログイン。結構な早番をもらっていたのに、このとき既に自分の番号以上の人数がいたような気もするが定かではない。

 

会場に入り、自分が快適にみられるであろう場所を瞬時に見極める瞬発力が求められる。見事本番での強さを発揮し、面白いくらいに視界が開けているセンターステージの端ポジションのほぼ最前列を確保することができた。

始まるまでの孤独タイム(これが一番辛い)をなんとか乗り切り、アンセムが流れ始め、OPのMANIACからボルテージはMAXに達した。特に花道からセンターステージに向かってくるメンバーを見たとき、今まで出したことないような声が出たので少し我に返った。花道練り歩きスキズを見たとき、わたし今スキズのコンサートに来ている!!!と一番実感した瞬間だった。


ここからはあまり合法な話ではないので、大きな声では言えないが、推しを見ながらカメラ回すのって普通に無理。せっかく目の前にいるのに、携帯の画面越しに見るなんて勿体なくないか!?の精神が発動してしまい(上級者の方はノールックでカメラを回せるのでわたしの技量がないだけの言い訳に過ぎない)、まともな写真動画ともにほぼ無いに等しい。おまけに推しの立ち位置が反対なので、上手側のチケット所持者のわたしには厳しい展開となった。
わたしだけの推しチッケムを作成することは叶わなかったけど、どの瞬間もわたしの瞳の奥にそっと閉じ込めたので、脳内HDD補完計画は成功と言えよう。

 

海外公演ならではの空気に包まれ、いつもなら絶対叫ばないこのわたしが腹から推しの名前を呼び、それに鼓舞されたかのように周りのおたくも腹から声を出す異様な腹式呼吸合戦がシンガポールという土地で開幕。
熱い戦いが繰り広げられ、サウチェでファンサをもらったにもかかわらず、本番でも強欲のツボが顔をのぞかせ再びお名前ボードで勝負に出た。しかしサウチェのときとは違い、周りからの押される圧がすごく、思うように動けないのが正直なところであった。自分自身人を押しのけてまで何かをするという根性も持ち合わせていない。
そんな中何を思ったのかさっきまで大人しくしていたおたくが突然攻撃を仕掛けてきた。おいおいおいおい、ここは平和に行こうぜと言わんばかりにその圧に耐えていたが、大人しくしてるのをいいことにひたすら圧をかけてくる。流石に我慢ならなかったので押すな!!!と日本語で抵抗した。
カーーン🔔と新たな合戦の開幕に見えたが、それ以来圧は止んだ。おたくとのタイマンはこれっきりにしたい。流石のたけみっちーやマイキーも異国の地ではタイマンを張ったことはないと思う。


お名前ボードを掲げたわたしの戦いはと言うと無事白星で終えることができた。先ほど前述したように、推しを見ながらカメラを回すという高等技術は持ち合わせていないので、わたしの脳内で綺麗に補正がかかった状態で保管されている。このときの推しはわたしの走馬灯に出てくるくらい良い笑顔をしていた。

どの瞬間も忘れたくないくらいに楽しく言葉ではうまく表現できないとはまさにこのことだと思った。終わってから合流した友人が開口一番に発したバンチャンめちゃくちゃやばい!!!がとても印象的だった。なぜならいついかなるときもフィリックスしか見ていない彼女の「やばい」にはわたしの想像を遥かに超えた色々な感情が詰め込まれているからである。


初の海外コンサートは一生の思い出と言っても過言ではないくらい輝いており、今思い出しても胸の奥がギュッとなるくらいわたしの人生での大きな経験となった。それも周りの人にたくさん助けられて、最高のシチュエーションでコンサートを見ることができたからだと思う。これが当たり前だと思わないよう心して次からの海外公演にも挑みたい。

 

そして今回の海外公演で素敵な出会いがあった。コンサート終わりに、サウチェの列で出会ったマレーシアから来ていたおたくに偶然再会することができ、インスタを交換し、今でも交流をはかっているとまでは言えないがいいねをし合う仲である。

 


次は最終日!!!この調子だといつあがるかわからないよ!!写真はコンサート終わりのノリで撮ったあまりシンガポールを感じない写真!!!

*1:サウンドチェック。所謂リハーサル